グリッタリング・グリーン
やって来た映像監督は、大柄でにこにこと笑顔を絶やさない、赤いもじゃもじゃ頭に茶色い瞳の男の人だった。

エマさんの話のとおり葉さんをおおいに気に入っているようで、差し出された手をスルーし、細身の身体を熱烈に抱きしめる。


人種の違いと、口の周りを覆うヒゲのせいでだいぶ上に見えるけど、まだ20代なんじゃないかと思う。

続いてクルーが数名、機材を持ってスタジオに入ってきたところで、葉さんが監督を見上げた。



「みんなそろった? 日本のスタッフを紹介するよ」

「もうヒトリ来るんだけど、イイ?」



もうひとり? と首をかしげる葉さんに、トモダチ、と監督が微笑んだ。

エマさん含め、彼らの会話は完全に日本語と英語まぜこぜだ。

仕事の話になると、そのほうが正確に伝わるのか、葉さんとエマさんが英語になり、器用だなあと憧れた。



「日本の若いクリエイター見たいって言うから、チョットダケねって」

「そういうこと、ティムの友達なら、全然かまわないよ」



歓迎、と葉さんが微笑み返したちょうどその時、戸口が開いた。



「ティムー、お前、携帯出ろよ、何度もかけたのに…」



あまりに知った声だったので、まさか、と呆然とした。

靴の泥を払いながら入ってきた慧さんが、私たちに気づいて目を丸くする。



「…あれ、なんで?」

「ケイ、紹介するよ、今回のパートナーの」



ヨウだよ、という声は誰の耳にも入らなかった。


止める間もなく、飛びかかった葉さんが慧さんの顔を殴りつける。

突然の襲撃に、慧さんがバランスを崩して、撮影用のスチールの壁に倒れ込んだ。

天井までの高さに加え、長さ十数メートルある鉄板が衝撃でビリビリと揺れる。

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