グリッタリング・グリーン

「いってえな、お前まで、なんだ!」



うるせえ! と怒鳴る葉さんは、もうとてもリラックスなんてムードではなかった。

誰もがあっけにとられて、何もできない。

ティム氏もぽかんと見守る。



「シリアイ?」

「もっと悪いわ、葉、後にして、時間がないのよ!」



エマさんの厳しい声も届かなかった。

完全に頭に血がのぼっているようで、慧さんの襟元をつかむともう一度殴る。

思わず目をそむけたくなるような鈍い音がした。



「よくこんなとこにのこのこ顔出せたな」

「何カリカリしてんだよ」

「なんだあの記事は、いい加減恥を知りやがれ」



記事と聞いてぴんと来たらしく、慧さんが眉を上げた。

めんどくさそうに葉さんを押しのけて、口元の血を拭いながら立ち上がる。



「あんなくだらねえ記事、信じてんのか」

「俺が信じる信じないの問題じゃねえ、いつまであんなみっともないことしてんだって話だよ」



おーいて、と慧さんが押さえる頬には、できて少し時間のたったあざがある。

きっと、部長が作ったものだ。



「いったいお前は、俺にどうしてほしいんだよ? 沙里を加塚に任せたいくせに、誰と遊んでも噛みつきやがる」

「遊ぶ前に、つけるけじめがあんだろ」

「けじめってな、離婚のことか」

「他に何がある」

「俺は別に、いつだってするぜ、沙里が首を縦に振りさえすりゃな」



こともなげに言ってのけると、慧さんは周囲に詫びるように肩をすくめてみせた。

葉さんはひざをついたまま、愕然とした声を出す。



「母さんが、嫌がってるってことか」

「そう言ってんだろ」

「嘘だ!」


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