グリッタリング・グリーン


「おっ、どうよ、王子は迷わずたどり着いた?」

「…さてはうちの場所教えたの、未希さんですか」

「部長の要請でね」



あの時の部長の思わせぶりな発言は、それか。

葉さんが来てくれたのは嬉しいサプライズだったけど、後味はもう、何がなんだかだ。


どうすればいいの。

どう言えばいいの。


そんな引き出し、持ってないですよ!


あーもう! とひとりで頭を抱えた私を見て、ちゃんと熱下がってる? と未希さんがおそるおそる訊いてきた。





「行こうと思ってたんだけど、ちょうどその頃、コンペの準備が佳境なんだよ」

「お顔を出すだけでも」



請求書の承認をもらいに行った時、ふと慧さんの打ち上げパーティの話をしたら、部長が難しい顔をした。

自分でも不思議なほど必死に、来るよう勧めてしまう。

なんとなく、仕事があるからという理由以上に難色を示しているように見えた部長は、困ったように笑って。



「じゃあ、隙を見つけて一瞬、行こうかな」



承認したよ、とPCのキーを叩きながら、言った。



部長が行きたがらないのは、沙里さんが来るせいだ。

と私は勝手に思っている。


葉さんの怪我があった時、慧さんとはなし崩し的に、関係が修復されたような気がしたけれど。

たぶん、そこから何も進んでない。


女の勘だ。



(部長ってば)



急に関係が変わっちゃって、うろたえてるんだろうか。

絶対に制御できると思っていた気持ちが、自分を裏切ったことに、ショックを受けているんだろうか。

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