グリッタリング・グリーン
部屋の隅の棚には、様々なサイズの紙が収められている。

机にも、いろんなものが描かれた紙と、あらゆる種類の筆記用具、画材。


息をするように絵を描く人の部屋だ。


スタイリッシュすぎて、あまりに暮らしの気配がないと思ったら、ここは、あえてそうしているらしい。

続き部屋を見せてもらって、納得した。



『うちの兄の部屋ですね』

『だから言ったじゃん、汚いよって』



あんまり見ないでよ、と恥ずかしそうに私を引き戻そうとする葉さんを無視して、戸口からじっくり観察した。

起きた時の様子が手にとるようにわかるベッドに、漫画と雑誌が並ぶ本棚、缶コーヒーが置きっぱなしの机。

何かの充電ケーブルが這うテーブル。

汚れた灰皿。


微笑ましくなるくらい、普通の男の子の部屋だ。



『なんでそんなに男の部屋なんか、知ってんの』

『大学の近くに寮があって、溜まり場だったんです』



葉さんは黙りこみ、ふうん、とだけ言った。





ワインを前にした葉さんは、再びご機嫌だ。

せっかくこんな格好だし、とアトリエのほうにテーブルを運んできて、ソファを背に床に座る。



「何に乾杯しようか」

「やっぱり加塚部長でしょう」

「じゃあ加塚さんの、終わらない恋に」



乾杯、ともはや何が乾杯なのかわからないまま、グラスを合わせる。

常に何本かストックしてあるという赤ワインは、爽やかで飲みやすかった。



「葉さん、かなり飲んでませんか」

「でも会場で飲んだぶんは、さめちゃったから」



仕切り直しだよ、と一瞬で干したグラスに、私がやりますと言う隙も与えず思いきりよく注ぐ。

ひやひやしながら見守っていると、横目で見られた。



「心配してんの?」

「え…」

「俺が酔うとどうなるか、覚えてるよね」


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