グリッタリング・グリーン
小中学校時代には、憧れの上級生とか気になる誰くんとか、お決まりの経験もしたけど、いつの間にか過ぎ去った。

絵を描いてれば楽しくて、彼氏なんて欲しいと思ったこともなかった。



「可愛いのに、もったいない」



顔が赤くなる。

葉さんも、こういうこと、言うんだ。



「狙ってた奴、いると思うよ、気の毒に」

「ないと思います、周りの子、みんな彼女いましたし」



ふーん、と納得いかなげに首をかしげて、葉さんが再びテーブルに向き直った。

飲む気が戻ったのか、グラスを渡してくれる。



「俺でいいんだ?」

「え?」



気を落ち着けようと、ワインに口をつけた私を、のぞきこむようにうかがってきた。

片ひざを抱えた姿が、子供みたいだなと思う。



「はじめて、俺にくれるんだ?」



あ…。

改めてそんなふうに言われると、耐えがたい恥ずかしさに襲われ、葉さんさえよければ、と小声で伝えると。

葉さんは、私を見つめながら、にこっと笑い。



「すっごい嬉しい、ありがと」



めちゃくちゃ優しくするからね、と本当に嬉しそうに言って、私を赤面させた。



心の準備がいるんです、と言い張った私に、じゃあ今日はキスだけね、と葉さんは。

飲んでいる間じゅう私の肩に腕を回して、気が向くと引き寄せては、お酒と煙草の匂いのする唇を押しつけてきた。


ほんとのことを言うと、それだけでも私は、緊張してドキドキして、出直したい気持ちでいっぱいだったんだけど。

葉さんがあんまり嬉しそうなので、我慢した。



「ほんとにキスもはじめてなの?」

「えー…学生の頃、遊びでされたことは、ありました」



何それ、と急に目つきが剣呑になったので、慌てて、罰ゲームみたいなものです、と訂正する。



「あったでしょう、負けた人が誰それに、みたいな」

「知らない、そんなふしだらな遊び」


< 195 / 227 >

この作品をシェア

pagetop