グリッタリング・グリーン
意外な日本語知ってるなと感心しながら、学祭の打ち上げで、酔っ払いに巻きこまれたんですよ、と説明すると。

ふうん、と疑わしげな顔で言われた。

なんだ、自分だって彼女、いたくせに。



「彼女って?」

「って、って」



エマさんでしょ、と憤慨すると、葉さんが目を丸くする。



「あれは彼女とは言わないと思うよ、俺も向こうも、お互いをそんなふうに呼んだこと、ないし」

「え、だって」

「エマが俺のこと、そう言った?」



考えてみれば、言ってない、誰ひとりとして。

部長も、慧さんも、沙里さんも。

あれ?

でも、だって、でも。



「そりゃしばらく関係もあったし、大事に思ってたけど、やっぱり仕事相手ってほうが、感覚としては合ってるよ」

「でも葉さんの、初めてのお相手なんですよね?」

「いつの間にそんな話してんの」



葉さんがぎょっとし、さすがに居心地悪そうに、そうだよ、とうなずきながら煙草に火をつけた。



「エマはあのとおり、美人だし頭も切れるし大人だし、それでこっちは高校出たてだよ、拒む理由、ないじゃない」

「エマさんからだったんですか」

「だね、外国人彼氏に飽きてたんじゃないかなあ」

「はあ」

「俺も当然、興味あったし、まあ客観的に見たら、盛りのついたガキが、お姉さんに食われちゃったみたいな」



そんな感じだよ、と少し顔を赤くする。

心の中で叫んだ。



(エマさんー!!)



楽しげな笑い声が、聞こえるようだ。

私が勝手に、ふたりの関係を甘くて切ない何かと想像していたことに、気づいていたに違いない。

それを利用して、“かき回して”くれたんだ。


がっくり来た。

私、なんにもひとりでできてない。



「ちなみにエマ以降は、何もないよ」



思い出したように葉さんが言った。

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