グリッタリング・グリーン
わ、と声をあげて、シャンパンがこぼれるほど動揺する姿に、笑いをこらえるのが大変だった。

可愛すぎるわ。


プレスの効いたスラックスを、ゆっくり撫で上げると、彼の身体が緊張していくのがわかる。

やめてあげなさいよ、と心のどこかで声がしたけれど、無視した。



「いつ、なるの」

「エマ…」

「今?」



脚のつけねに指が到達した時、葉がぎゅっと目を閉じた。

その一瞬の隙に、私は椅子から腰を上げて、綺麗な唇をさらうように、キスをした。


お互い、頬にすることはあったけれど、口を合わせるのは、これが初めて。

私はずるいので、ぎりぎり親愛のキスと言えるレベルのことしか、しなかった。

もしかして、彼が我に返って、ここまでの流れをなかったことにしたがるかもしれない。

その時のためにね、なんて考えながら。


だけど、顔を離した時。

自分のほうにこそ、そんな余裕なんてないことを、急に実感した。


葉は、なされるがままに、椅子に押しつけられた格好で私を見あげていた。

その目には困惑と、不安と期待と。

男の子らしい猛りが、見え隠れしていた。


あらら。

こんなつもりじゃなかったのに、ほんとよ。


自分にそう言い訳しなくてはならなかった。


ちょっとからかって、大人のやりとりの入り口を見せてあげるつもりだったの。

男の子の身体が、挑発を無視できるはずないことくらい、わかってるから。

精一杯の自制心で、それをなだめる様子を、笑いながら見てるつもりだったの。


でも、もうダメだわ。

どうやら私。



この子が、欲しかったみたい。



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