グリッタリング・グリーン
あれだけ酔っぱらいやすくて、それも変わってる。

スロースタートだけど強力、みたいな分解酵素を持ってるんだろうか。

煙草を指に挟んでいるせいで、持ち手を無視してカップを握る葉さんが、ひと口含みながら眉間にしわを寄せた。



「あのあと加塚さんにも、すっごい怒られて、生方に謝れって、そればっかり」

「それは、寝てしまったことを、でした?」



念のため確認すると、あれ、と目を見開く。



「もしかして、違うのかな」

「葉さん、あの席でのこと、全部覚えてます?」



こわごわ尋ねた私に、屈託のない首肯が返ってきた。



「不思議と、記憶はなくならないんだ、俺」

「それは、ええと、大変ですね」

「なんで?」



なんでと言われてしまうと。

どうやら葉さんは本当に“寝ちゃった”ことしか気にしてないみたいだ。

感動的なほど無頓着だな、と感心していたら、私の微妙な表情に気づいたのか、じっと見つめてくる。



「まさか俺、あそこでまた何か生方の気分悪くするようなこと、言った?」

「いえっ、全然です、ただちょっと、驚きました」

「何に」

「部長と…仲いいなあと」

「別に、普段からキスとかしてるわけじゃないよ」



わかってます。

本気で念押しをしたらしい葉さんは、カップを戻した拍子に落ちたスプーンを、あ、と拾って。

使うつもりもないのか、テーブルの端にそれを置いた。



「酔っぱらうとしちゃうんですか」

「さあ、したい相手がそばにいれば、するんじゃない」



他人事のように、不思議そうに首をひねる。

何その気にしなさ。

男女の区別もなしですか。

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