恋は天使の寝息のあとに
今夜は心配で眠れない、そう思っていたが、心菜の隣に横になった私は疲れのせいか、いつの間にか眠りに落ちていた。

明け方、ふと目を覚ますと、眠っている心菜を挟んで向かいに横たわる恭弥の姿。
一晩中、心菜の様子を見ていてくれたのだろうか。心菜のお腹に手を添えたまま、眠ってしまっている。

二枚の布団に三人で、少し狭い川の字。

心菜は寝返りで掛布団を剥がしてしまっているし、恭弥ははなから何もかけていないようだし、寒そうな二人に私はそっと毛布を被せてやる。

夕べは熱で呼吸を荒くしていた心菜も、今は落ち着いたようで、すやすやと穏やかな寝息を立てている。
私の不安は、取り越し苦労で済んだようで、ほっと胸を撫で下ろす。


翌日、微熱にまで下がった心菜を恭弥の車に乗せて、休日診療をしている病院へ連れて行った。
診断結果は風邪。散々騒いだあげくにただの風邪とは。
ホッとしたと同時に、なんだか恭弥に申し訳なくなってしまった。

「……ごめんなさい、大騒ぎして」

私がしゅんとしながらうつむくと

「そこは、ありがとうだろ?」

こちらに目もくれず、冷たく、ぶっきらぼうに言い放つ恭弥。

「……ありがとう、恭弥」

私が改めて言いなおすと、彼はふんぞり返って偉そうに胸を張った。

「感謝が足りねぇな。もっと俺を敬えよ。『ありがとうございます恭弥様。最高に素敵で格好良いで――』」

「ちょっと、調子乗ってない!?」

あつかましくなった恭弥の腕を、私はバシッと一発叩く。

素敵で格好良いかは置いといて
恭弥がなんだかんだ言って優しいってことは良く分かったよ。

余計に調子に乗りそうだから、あえて口には出さないけれど。
辛いときにそばにいてくれるあなたに、私はとても感謝しているよ。



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