恋は天使の寝息のあとに
悔しくて、哀しくて、唇を噛みしめた。
どうして恭弥にこんな嘘をつかなきゃならないのか。

ずっと私たちのそばにいてくれた
大好きな、恭弥に……

これ以上顔色を覗かれないように、私は彼に背を向けた。
背中の後ろで彼がどんな顔をしているか想像したら、胸が張り裂けそうなくらい苦しくなった。


少し間を置いて、彼が呟く。

「ひょっとして、さっき俺がしたこと、嫌だった?」

……え?

突然言い出した彼に驚いて、私は再び振り向いてしまった。
目の前に、少し情けない顔の恭弥がいて、私の瞳から溢れそうな涙を彼が指で拭った。


「……無理やり抱くようなことして、悪かった。
もう、二度としないから、泣かないでくれ」

バツが悪そうにうつむく彼。


違うよ、恭弥。
無理やりだなんて、嫌だなんて、そんな理由で私は泣いているんじゃない。

少なくとも、私は嬉しかった。
あのまま、抱いていて欲しかった。

こんなことを言ってしまったら、彼は余計に混乱してしまうかな。
ぐっと唇を噛みしめて、言葉を飲み込んだ。
< 142 / 205 >

この作品をシェア

pagetop