恋は天使の寝息のあとに
「血は繋がってないのに、沙菜ちゃんにも心菜ちゃんにもそんなに優しくしてくれるの!?」
「ああ……うん、まぁ……」
「すっごい良い人じゃない! 見た目も性格も完璧ね!」

確かにそう言われてみれば、良い人なのかもしれない。
普通の人なら、ここまで踏み込んで手助けしてはくれないだろう。
私に対する態度の冷たさと、決して褒められない口の利き方から、あまり良い人感はしないけれど――

「そうだよねぇ。ありがたい話だよねぇ……」

私はしみじみと頷いた。
いくら子どもが好きだからとはいえ、所詮は他人の子だ、どうしてこんなにも心菜に愛情を注いでくれるのだろう。
今さらながらに不思議に思えてきた。

「っていうかさぁ」
由利亜さんがテーブルの上の財布を眺めながら言う。
「きっと今ごろ、財布なくて困ってるわよねぇ」

「そうかもねぇ」
「お兄さんの家、ここから遠いの?」
「少しね。電車で三十分くらい」
「そうなんだー」

由利亜さんがわざとらしい相槌を打つ。少し間を置いたあと、紅茶のカップに口をつけながら彼女が言った。

「財布、届けてあげれば?」
「え!?」

由利亜さんは真剣な眼差しで腕を組み、うんうんそれがいい、と頷いた。

「だって普段、お世話になってるんでしょう? 困ってるときくらい力になってあげないと」
「で、でも……」
「それに、イケメンには優しくしないと!」
「なにそれ……」
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