恋は天使の寝息のあとに
「むしろ、仲が悪いくらいだよ。
まともに話したことないし、正直気まずいっていうか」

「そんなに頻繁に会いに来てくれるのに、仲が悪いわけないんじゃない?」

「それは心菜がいるからであって……恭弥は私のこと、全く興味ないから……」

自嘲するように笑う私を見て、由利亜さんはおや? と何かを見つけたような顔をした。
あら? ひょっとして、いじけてるの? そう言って私を覗き込んでにやりと笑う。

そんなんじゃない、と私は首を大きく横に振る。
が、心の中で付け足した。私が恭弥に翻弄されているのは事実だ。
恭弥は私と距離を置きたがっている。どんなに私が近寄ろうとしても、彼はそっぽを向いて逃げていく。
拒んだかと思えば、今度は「結婚しよう」なんてとんでもないことを言い出して、突然懐に踏み込んでくる。
まるで私を弄んでいるかのように。


「本当に、何を考えているのか分からないんだよ。あの人」

「お兄さんなのに?」

「お兄さん、だからかなぁ」

こんな形で出会わなかったら、もう少し分かりやすかったかもしれない。
途中から無理やり『兄妹』なんて括られてしまったから、私たちの距離感はどこかいびつになってしまった。

肩を竦める私を見て、由利亜さんまでやれやれと疲れた顔をする。

「分からないなんて言ってないで、ちゃんと話してみればいいのに」

そりゃあ私だって話せるものなら話したいけれど。
理解し合おうと頑張ってみたところで、きっとまた冷たくあしらわれてしまうんだろうなぁと思うと、頑張る気力も失せるってものだ。
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