恋は天使の寝息のあとに
公園で三十分ほど子どもたちを遊ばせたところで、引き上げることにした。
帰る途中で近くのスーパーに寄り、子どもたちと一緒に食べられそうな夕飯のおかずを調達する。
由利亜さんの旦那さんはサービス業で、今日は遅くまで仕事だというから、我が家で一緒に夕飯を食べることにしたのだ。
家に帰って白いご飯を炊いて、簡単なお味噌汁とサラダを作った。
手抜きではあるけれど、一応夕飯の出来上がり。
毎日忙しくて料理をする時間がないから、短時間で出来るメニューばかりがレパートリーに加わっていく。
早めに食事を作り終え、四人でのんびりしていると――
――ガチャリ。
玄関のドアが開く音がした。
「ただいま」
そう言ってひょっこりとリビングに姿を現したのは恭弥だった。
一瞬どきりとして、おかえりの声を出すことが出来なかった。
昼間見たときと同じ、よそ行きの服。
普段のような、だぼだぼパーカーとくたくたジーンズじゃない。
あの女性と一緒に歩くから、そんな格好をしているのだろうか。
恭弥は由利亜さんの姿を見つけると軽く頭を下げて会釈をした。
「どうも」
「お邪魔しています」
簡単な挨拶を済ませたところで、恭弥はきょろきょろと落ち着かない様子で辺りを見回した。
「なぁ沙菜、俺の財布見なかった?」
「ああ、そうだった!」
私は小走りにダイニングへ向かい、机の上に置いておいた恭弥のお財布を持ってリビングへ戻る。
「はい、これ」
「やっぱここだったんだ。さんきゅ」
恭弥は私から財布を受け取ると、お尻のポケットへ突っ込んで、そそくさと回れ右をした。
が、リビングを出る直前、ふと思い出したかのように「そういえば――」と振り返る。
「沙菜、お前、うちに来なかった?」
心臓がびくりと跳ね上がる。
あのとき、恭弥の家の玄関で、やっぱり私の姿、見られてたんだ。