白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「心配するな」

それから男達に向き直り、低い声で告げる。

「わざわざ死にに来るとは……ご苦労だな」

「死ねっ!」

ザザッと土を滑る草履の音がしたかと思うと、二人の男が一斉に刀の切っ先をこちらに向けて走り込んできた。

「きゃああっ」

「遅い!」

勝負は一瞬だった。

以蔵さんに無駄な動きは一切なく、十字を描くように二度、刀を振っただけだった。

襲ってきた男性達は、土間にペタンと座り込んでいる。

「……なんだ?」

二人のうちひとりの男性は、そう呟きながら不思議そうに自分の身体を見下ろした。

その直後、眉間から一筋血が流れて、男性がまさかと言った風に笑った。

……嘘でしょ?!

「きゃああ!」

「柚菜、見るな」

以蔵さんは焦ったように私を胸に抱いたけど、遅かった。

見てしまったのだ、私は。

白鷺一翔の恐ろしさを。

ゆっくりと立ち上がった男性の身体が、真っ二つに分かれた。

斬られたところが分かれているのに、それに彼自身が気付いておらず、立ち上がったのだ。

ようやく異変に気づいた男性が叫びながら倒れ、私はその音に身体が震えた。

もう一人の男性も同様に、立ち上がろうとした途端、上半身だけが土間に転がり悲鳴をあげた。
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