白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「あら……」

二人を見ることが出来ない。

白鷺と女性が人並みを縫うようにして私のもとにやって来た。

固い表情で眼を伏せた私を二人が見つめる。

胸がグーッと圧迫される苦しさに、頬が歪んだ。

「あなたは確か……」

爆乳美女が、唇に笑みを浮かべたまま私の全身を舐めるように眺めた。

鮮やかな桔梗があしらわれた着物がなんとも彼女によく似合っている。

値踏みするような、品定するような彼女の眼差し。

フッと笑みをこぼすと、彼女は白鷺の首に腕を絡めて彼の唇にキスをした。

「じゃあ……またね、白鷺」

嫌だ。

私はなにも言わずに身を翻すと、人の波を避けるようにしながら逃げ出した。

他の表現なんかない。

正真正銘、私は二人から逃げ出したのだ。

逃げ出しながら、走りながら私は気付いた。

私は白鷺を好きなんだって。

ああ、だからこんなに胸が痛いんだ。

いつの間に好きになったのか、何がきっかけだったのかも分からない。

でも、好きになってたんだ。

あの綺麗な人は、カッコイイ白鷺にピッタリだ。

並んでいると二人は本当に素敵で、それが私とじゃない事実。

不意にあの日、布団の中で座って抱き合っていた二人を思い出した。
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