呪われた姫君と怪盗

急に真面目な顔になり、手を組む秀哉。
これが、普段の彼の顔だ。

彼はあれでも、普段は某有名IT企業の創始者かつ社長である。
東大経済学部卒、ルックスも良いということで社員だけでなく、道行く女性から熱狂的な視線を日々送られているが、気付いていないようである。

だが、しかーし、彼が実はあの有名な大泥棒の一家の末裔であることは皆知らない。
知ってるのは私だけだと思う。
と一人で納得していると、

「最近、神戸で不穏な事件が多いのは君なら知ってると思うんだけど、それが、全てアレに関わっていると思うんだよ。」
「アレか…。」それに、
「事件の犯人は皆異能者だった。
そして被害者も…。つまり…」

「私が狙われるってという可能性が少なからずあるんだな。」
と言うと、
「大アリだよっ!!!」
と声を荒げる秀哉。

「私が異能者であることを分かっているのは、秀哉と私の両親、父方の祖母ぐらいだ。心配するまでもないよ。」
と私が言うと、

「そう言ってる君が一番心配だよ。
五日前の渋谷で起こった強盗事件。捕まえた後で意識失って倒れたの、忘れたの?」

「なんで、秀哉がそんなこと知ってるんだ…?」
私は驚きの表情が隠せない。
「それはねぇ、僕がアリスちゃんのことを愛してるからだよっ!」
とウィンクした秀哉。
うっ…。
迂闊にも時めいてしまった。
私が普通の女の子だったら、これは鼻血を出すね。でも、何で知ってるかは想像つくなんせ彼、赤城秀哉は
「変態ストーカーだからな。」
「ええっーー!!」
驚愕する秀哉。

「お前が驚くなよ…。だってお前は、私の周りにいつも監視役つけているだろ。相当腕の立つ奴。」
「あれま。ばれちゃったか、あはっ。お見事です、天才高校生探偵さんっ。」
と、私に拍手する秀哉。

「出来れば監視を10人から5人に減らしてくれたらな。大勢だから、逆に人目を引いてしまう。」
「そうだけどさ、おとーさんは心配なのですよ!
アリスちゃんが、変な奴に連れていかれないかとか、ナンパされないかだとか…。」
自分のことおとーさんって、似合わないな~、秀哉。
面白いからまぁ、黙っておくか。

「ナンパはされないんじゃない、だって私、世間では男ってなってるからな。」
「………。」
はぁーっ、という秀哉のため息が聞こえる。
「アリスちゃんは可愛いすぎるから、男からも女からもナンパされますー!!わかってる?」

「わからんな。私が今の学校でなんて呼ばれてるかって知ってるか?」
「知ってるよ。絶対零度の王子様だっけ?」
「それは二校前の学校だ。」

「雪の女王様。」

「………。」

「えっ、違うの…?!じゃぁー、氷結の王子!…じゃなくて、えっとー。」
と焦り出す秀哉。

「もう何にでもしてくれ。兎に角…、
目線が怖いとか、いつも休み時間本読んでるとか何やらで、誰も私に話かけてもこない。
来たとしても新聞部や放送部ぐらいだ。」
個人の用事で話しかけてくる人なんて
一人もいない。

実に退屈な学校生活だ。

< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop