鬼常務の獲物は私!?



やっぱり面と向かってだと、弱い私には厳しいものがある。

強気のポーカーフェイスは早くも崩れ、メールで伝えるべきだったかと後悔してみたが、もう遅い。

息を大きく吸い込み、吐き出した。

情けない顔になってしまい、常務の方を向けなくなってしまったけれど、言うべきことは言わないと……。

溢れ出しそうな愛しさと切なさを心の奥に押し込めて、口を開いた。


「私がここへ来るのは、今回で最後にします。
呼ばれても、もう来れません。今までありがとうございました」


言った……きちんと言えた……。
そのことに少しだけホッとしたが、後ろに椅子から立ち上がる音がして、また緊張感が走る。

「あ"?」と不機嫌そうな声もした。


「なにを怒っている?
出張で構ってやれなかったことが不満か? それとも、今日呼び出すのが遅くなったせいか?」


「ち、違います。怒ってもいないし、私なんかが不満なんて、そんな……」


怒ったり拗ねている訳じゃないことを示すために、もう一度笑顔を作って見せたいところだけれど……もう、無理。

堪えるのに精一杯で、笑顔どころか、話す声まで震えてきてしまう。


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