鬼常務の獲物は私!?
そこを狙い打ちされ、すぐに口内に熱い舌先が侵入してくる。
押し返そうとする私の舌に絡みつき、撫でられ、しゃぶられ、掻き回された。
激しいキスに息が苦しくなり、合わせた唇の隙間から喘ぐように空気を吸い込んでいた。
なんて苦しいキスなのだろう……。
その苦しさは、息苦しさより、心の苦しさの方が遥かに大きい。
決意を固めたはずなのに、グラグラと心が揺れていた。
拒否しないとダメなのに、このキスを心のどこかで喜んでしまいそうになる。
好きになってはいけないのに、胸に愛しさが込み上げて、今にも溢れ出しそうだ……。
やがてその苦しさは涙となり、目尻からこめかみへと流れ落ちた。
私の涙に気づいた常務は、唇を離して、悲しそうな目で問いかける。
「そんなに俺が嫌なのか……?」
「嫌じゃないです……だから困るんです……」
「意味が分からない。それなら俺を受け入れたらいいだけの話だろ。なぜ泣く必要がある? なぜ俺から離れようとする?」
「それは……」
慰み者にはなりたくないから……たったひとりの恋人として、私だけを見て欲しいから……。
婚約者がいる人にそんなワガママを言うわけにいかず、言いかけた口を閉ざすしかなかった。