鬼常務の獲物は私!?



なにが割れたのかというと、私があげたバレンタインのクッキーだ。

元は可愛いハート型のクッキーだったのに、今は無惨なカケラとなって箱の中に積み上げられていた。


「日菜子……悪かった。
割れても食べるから、許してくれ」

「いえ、そんな……。また作ればいいので、こんなのを食べなくても……えっ⁉︎」


常務はこの場で、クッキーのカケラを次々と口に入れていく。

「やめて下さい!」と止める私の声も無視して、最後は箱を傾け、カケラとも言えない小さなカスまで流し込むようにして食べてしまった。

「旨かった」と言う常務の顔を、口を開けてマジマジと見てしまう。

この人は神永メディカルの御曹司で、高級食材をしょっちゅう口にしていそうなお金持ちなのに、落ちて割れた手作りクッキーを食べるなんて……。

お腹、壊さないといいけれど……。


驚き呆気に取られた後は、心がじんわりと温かくなる。

小さなカケラまで拾ってくれた比嘉さんにも、それを食べてくれた神永常務にも、「ありがとうございます」と、笑顔で感謝の言葉を口にした。


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