鬼常務の獲物は私!?
「ありました」
高山さんはそう答えてから一度、口をつぐみ、溜息を吐いてまた話し出す。
「先ほど私は社長室に呼び出されておりました。そこで聞かされたのは、沼田専務を副社長にと考えているとのお話でした」
「なに⁉︎」
彰さんの表情が強張っていた。
沼田専務とは、社長の長女の旦那さん。つまり、彰さんの義理の兄にあたる人だ。
年齢は40代前半で、彰さんより10歳ほど上だったように思う。
そんな基礎情報以外は、私には分からない。
常務より専務の方が役職は上でも、次期社長の座は実の息子の彰さんだろうと、私を含めた社員一同は思っている。
そのため話題に上るのは彰さんの方が圧倒的に多く、注目度の低い沼田専務の噂話は滅多に聞くことがないのだ。
今現在、副社長のポジションは空いていて、沼田専務をそこにと、社長は考えている……。
それを伝える高山さんは深刻そうな顔をしていて、彰さんも固い顔。
でも私は、それのどこが問題なのだろうと、首を傾げるだけだった。
だって、副社長が誰であったとしても、次期社長は彰さんなんだよね……?
しかし、ふたりの顔を見比べて、そんな簡単なものではないのかもしれないと、思い始めた。
彰さんは眉間に深いシワを寄せて、低い声で呟く。
「親父は俺に、後を継がせる気はないということか……。くそっ、社長室に行って直に聞いてくる」
大きなストライドで、ドアに向けて歩き出した彼。その背中を高山さんが引き留めた。
「お待ち下さい。
この話にはまだ続きがあります」