鬼常務の獲物は私!?



常務室を出て行こうとしていた彰さんは足を止めて振り向き、鋭い視線を高山さんに向けた。


「なんだ、言ってみろ」

「はい。私の推測も入るのですが……」


それから数分、高山さんの長くて難しい話を理解するのは大変だったが、大雑把になら、なんとか私にも理解することができた。

沼田専務を副社長にと言った後、社長は意味ありげに笑ってこう言ったそうだ。

『ところで彰は、景仁会病院の仕事は取れそうなのか?』

年明けに景仁会病院関連の講演会に、私も連れて行かれたことは、まだ記憶に新しい。

2年後に系列の総合病院を新設するということで、ビックビジネスチャンスがあるのだと、そのとき教えてもらった。

高山さんの推測では、沼田専務と天秤にかけることで、社長が彰さんの力を試そうとしているのではないかということだった。

つまり次期社長の座が欲しいのなら、その仕事を取って来て、有無を言わさぬ実力を見せつけてみろと、社長は言っているのだ。


高山さんの話をなんとか理解した私は、心配しながら彰さんを見つめていた。

年明けの講演会は、ひと月半ほど前のこと。
あの時、景仁会病院の生田目理事長先生にお会いしたことは、よく覚えている。

私の数々の失礼を怒らずに笑い飛ばしてくれた素敵なご老人で、神永常務がビジネスチャンスを狙っていると知った上で、『今度ゆっくり話し合おうじゃないか』と言ってくれた。


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