鬼常務の獲物は私!?
あれから商談は順調に進んでいるものだと、勝手に思っていたのだが、違うのだろうか……?
なにか上手くいかない問題でも、出てきているのか……?
そんなふうに心配する私と、ドア前で唇を噛み締めている彰さんの視線が合った。
いつもなら、気恥ずかしさに先に目を逸らしてしまうのは、私。でも今は、彼が先に目を逸らした。
え……どうして……?
背けられた横顔は、まるで、その心配事に私も関与していると言いたげに見えた。
どういうことだろうと、途端に心が騒めき出す。
景仁会病院とのビジネスの話に、私が登場するわけないのにと戸惑いながら、目を逸らされた意味を探していた。
高山さんの話を聞き終えた彰さんは、「分かった」と言ってから、「それでも社長室に行ってくる」と、再び私たちに背を向けてしまう。
ドアノブに手が掛けられたのを見て、引き止めなくてはと心が慌てる。
でも、なんて声を掛けていいのか分からない。
「私になにか隠していませんか?」と聞くのは変な気がする。
ビジネスの話を一から十まで私に説明する義務はないし、説明されても理解できないから。
それなら、「私になにかお手伝いできることはありませんか?」と声を掛けるのはどうだろう。
これもダメか……。家事と猫の世話以外で、私が役に立てることなどないのは、自分が一番よく理解しているもの。
それでも目を逸らされたことがどうしても気になって、とにかく引き止めようと「あの……」と言いかけたら、私より先に比嘉さんが彼に話しかけた。
「神永常務、福原さんにお願いする訳にはいかないのでしょうか?
今回はお見合いを受けろと言われてはいませんし、商談に同席してもらうくらいなら、問題はないかと思いますが」
「え……お見合いって……」