鬼常務の獲物は私!?



すぐに唇は離されたが、驚きすぎて問いかけるべき言葉を失い、呆然と彼を見上げてしまう。

するとドアを開けられて、背中を押され、常務室から出されてしまった。


「あき……いえ、神永常務、まだ聞きたいことが……」

「そんな顔をするな。お前を巻き込んだりしないから、安心しろ」


その言葉の後に、バタンと目の前でドアを閉められてしまった。

追い出されたということは、休憩時間は終わりで営業部に戻れという意味だと分かっている。

それでも、なかなか立ち去ることができずにいるのは、納得がいかないからだ。

キスでごまかされ、説明してくれないなんて、ひどい。

お見合いとか商談同席とか、よく分からないけれど、私が関わっているんだよね……?

それくらいは分かるから、安心しろと言われても、無理なのに……。

しばらくドア前に立ち尽くしていたが、固く閉ざされたこのドアをノックする勇気が持てなかった。

家に帰ってから、もう一度聞いてみようと思い、諦めて今は立ち去ることにした。


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