鬼常務の獲物は私!?
階段を下りて、3階の営業部のフロアに戻ってきた。
これから外回りに出掛ける様子の玉置さんと入口でばったり出会い、話をする。
「日菜ちゃん、お帰り。今日は早かったね。
あれ、浮かない顔してどうしたの? 常務と喧嘩?」
「いえ……喧嘩じゃないんですけど、あの……」
「ごめんね、ゆっくり話を聞いてあげたいところだけど、アポイントの時間が……。行ってくるね」
「はい……頑張って下さい」
玉置さんを見送ってから、営業部のフロアを見回すと、私以外の誰もが忙しそうに、午後の業務に励んでいた。
それを見て、申し訳なさが込み上げてくる。
心の中がモヤモヤするけれど、業務時間中なのだから、私も真面目に仕事をしないと……。
自分の席に座り、ノートパソコンに向かって仕事を始めようとしていたら、知らないアドレスからメールが一通届いていることに気づいた。
私にも一応、社用のアドレスが与えられていて、医療機器メーカーさんや他部署の社員からの連絡や、社内一斉メールなどがたまに来る。
他の営業職の人に比べたら、活用されていないも同然なアドレスに届いた知らない人からのメール……それを開いて私は「あ……」と呟いた。