鬼常務の獲物は私!?
それは景仁会病院の理事長先生からのメールだった。
事項の挨拶から始まり、前にお会いした時のことを振り返る長い文面の後に、ただの事務員の私なんかに直接連絡してきた理由が書かれていた。
【あなたの耳には私の願いが直接届いていないのだろうと推測し、失礼ながらこうして名刺のアドレスに連絡を取らせていただきました。
景仁会病院で事務長をしております、私の息子、生田目育夫(ナマタメ イクオ)のことは覚えておられますか?
どうしてもお嬢さんに会いたいと泣きつかれて、親としてはなんとかしてやりたいとの思いでおります。
商談という形で構わないので、あなたにも同席していただきたい。色よいお返事をお待ちしています。敬具】
これって、つまり……。
何度も文面を読み返して、やっとなにが起きているのかを理解した。
どうやら私は理事長先生の息子さんの、景仁会病院の事務長に気に入られてしまったらしい。
ひと月半ほど前にお会いした時のことを思い返してみる。
たしか、太っていてメガネをかけている人だった。歳は40代半ばくらいか。
高山さんの後からの情報によると、お見合いを繰り返していると聞いたような……。
挨拶しか言葉を交わさなかったので他に印象はないが……そこまで考えて「あ、そうだ」と、思い出したことがあった。
赤い顔でジッと見つめられた気がする。
私の歯にお弁当の食べカスでも付いているのではないかと思ってしまったが、あのとき見染められていたということみたい。
そして事務長さんは、父親である理事長先生に、私ともう一度会いたいと相談したということなのか……。