鬼常務の獲物は私!?



「旨いか?」

「はい、美味しいです」

「俺の愛する女が作ってくれた夕食だからな。
旨いのは当たり前だ」


彰さんはニッと笑ってそう言って、続きを食べ始めた。

愛する女と言われたら、嬉しくなってにやけてしまいそうになるけれど、その前に言うべきことを口にしなければと、姿勢を正して本題に入った。


「あの、景仁会病院との商談のことなんですけど……」


彼の箸が一瞬止まったが、すぐにほうれん草の胡麻和えの小鉢に伸びて、平然とした顔で食べ続ける。

そして「お前が関わる問題じゃない」とだけ答えが返ってきた。


「で、でも、私が同席した方がいいんですよね?」


話を終わりにされないように慌てて言ったのだが、「小百合の言ったことなら気にするな」と言われ、残りを掻き込むように食べ終えた彼は「ごちそうさま」と席を立ってしまった。


「待って下さい!」

「風呂に入る。今夜は仕事を持ち帰っているから抱いてやれない。先に寝てくれ」


あ……行ってしまった……。

私の部屋にベッドは置いてあるが、同居してからずっと彼の部屋のダブルベットで、抱かれながら眠りについている。

経験値の低い私には「えっ、今日も?」と思ってしまう夜も多かったはずなのに……今夜は抱いてやれないと言われてしまうと、ホッとするのではなく寂しく感じてしまった……。


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