鬼常務の獲物は私!?
すごい……敷居が高そう……。
タクシーから降りて、門をくぐる前に気後れしてしまい、足が動かなくなってしまう。
今日は朝から頑張ろうと気合を入れていたのだが、高級感漂う建物を見てしまったら、本当に私は大丈夫だろうかと思い始めてしまった。
無事に今日の場を切り抜け、彰さんのお役に立てるのだろうか……こんな私が……。
怖気付く私に比嘉さんは「しっかりして下さい」とクールな励ましをくれて「行きますよ」と先頭に立って歩き出した。
玄関に伸びる石畳のアプローチを、コツコツとヒールを鳴らして歩く彼女。その後ろをビクビクしながら私が続く。
暖簾をくぐると勝手に扉が開いて、女将さんらしき着物姿の中年女性が中から出迎えてくれた。
比嘉さんが社名を伝えると、「お待ちしておりました」と笑顔を向ける女将さん。
玄関でパンプスを脱いでスリッパに履き替え、私たちは立派な和風のロビーに足を踏み出す。
春の生け花がたくさん飾られていて、素敵なロビーだった。中でも一際大きな梅の生け花には、荘厳な美しさを感じて圧倒されてしまう。
屏風や掛け軸、扇など、飾られている全てのものに洗練された風情を感じ、自然と口から感嘆の溜息がこぼれ落ちていた。