鬼常務の獲物は私!?
そんなロビーを抜け、女将さんの後に付いてピカピカに磨かれた木目の廊下を、奥へと進んで行く。
まっすぐ進んでひとつ角を曲がり、立ち止まった女将さんに「こちらでございます」と言われたのは、桜の間と札を付けた襖の前。
いよいよだと思った途端に緊張が跳ね上がり、胸が苦しくなっていた。
ヘマしないように頑張らないと……そんなふうに失敗を恐れる気持ちから来る緊張が半分と、彰さん怒るかな……私が来ることを知らない彼の反応に対する緊張がもう半分。
「福原さん、頑張って下さいね」
比嘉さんに後ろから両肩を強く叩かれ、汗ばむ両手を握りしめて深く頷いた。
怖くなったら逃げたくなる弱い私だけれど、ここは覚悟を決めてしっかり努めなければ。愛する彰さんのためなんだから……。
女将さんは床に膝をついて、襖の縁に両手を掛けていた。
「よろしいですか?」と聞かれて「はい」とハッキリ答える。
「失礼いたします」
洗練された所作で襖は三度に分けて開けられて、「お連れ様がお越しになりました」と女将さんが三つ指ついてお辞儀をしていた。
その後ろにいる私は、立ったまま頭を下げて、ゆっくりと顔を上げる。
すると……広さ12畳ほどのお座敷で座卓を囲んでいる男性たちが、一斉に私に注目した。