鬼常務の獲物は私!?
「ですから浮気の心配はしなくていい。安心して僕の妻になって下さい」
「え、ええと……」
ゲームのことはよく分からないけれど、生身の女性に好かれたことがないというのは確かみたい。
だって私は今、ものすごく困っているし、嫌悪感も感じている。この人、すごく苦手だ……。
比嘉さんからの注意事項では、困ることを言われたら返事をせずに、ただニコニコしていなさいと言われている。高山さんがフォローしてくれるからと。
でも、私は笑顔を作ることができなくなっているし、彰さんの左隣にいる高山さんは、私のフォローではなく、今は彰さんを止めることに気が向いているみたい。
視線を下げると、テーブルの下で怒りに震える彰さんの握り拳が見える。
営業スマイルはとっくに消えて、眉間には深いシワが刻まれてしまい、「こらえて下さい」と言うように高山さんの手が彰さんの膝を叩いていた。
比嘉さん、どうしよう……。
いくら優秀な秘書の高山さんでも、彰さんと私の同時フォローは無理みたい。
オロオロして逃げ出したくなる私に、正面から荒い鼻息が吹きつけてくる。
横幅のある大きな体がバウンドして姿勢を正すと、「日菜子さん!」と大声で呼ばれた。