鬼常務の獲物は私!?
「は、はい……」
「今、はいと言ってくれましたね。
それは僕との結婚を承諾する意思と捉えていいですよね」
「ええっ⁉︎ 違います!
これはただの返事で……」
「そうですか、焦らして恋の駆け引きを楽しむつもりということですか。まぁいいです。取り敢えず庭園に散歩に行きましょう。早くふたりきりになりたい」
この人……全然、奥手なんかじゃないんですけど……。
彰さんも強引なところはあるけれど、こんなに私の気持ちを無視した攻め方はしてこない。
なにより愛情があるから、彰さんの攻撃は少し困って、結構嬉しかったりする。
でも、事務長さんの攻撃は……失礼かもしれないけれど、気持ち悪く思ってしまう……。
彰さんは鬼の形相で、片膝を立て、今にも立ち上がりそうになっていた。
それを必死に止める高山さんの「我慢して下さい」という小声にならない必死のお願いが、私の耳にも聞こえている。
頼りにしていた高山さんは大変そうで、ここは自分の力でなんとかしなければいけないのだと悟る。
商談に害を及ぼすから断ってはいけないけれど、頷いてもいけない……。
でも曖昧にはぐらかし続けるなんて、私には無理だから……。
混乱する私に事務長さんは手を差し出し、「さあ、早く庭園へ」とお腹を揺すって立ち上がる。
頭の中には「どうしよう」という言葉しか浮かんでこない。
ダメだ……切り抜けられない……そう思ってしまった土壇場で、比嘉さんに花粉症を理由に断ればいいと言われたことをなんとか思い出した。
急いでそれを言おうとしたら……先に理事長先生が口を開く。