鬼常務の獲物は私!?



鏡に映る自分の顔が、疲れていた。

お座敷に戻るのが憂鬱で、でもトイレに長居すると変に思われるだろうし、仕方なく鏡に背を向ける。

一歩二歩、出口へと進んで、突如いいことを思い出した。

こんな風に気分が滅入るときに、自分を元気にする方法……それは、スマホに撮りためた太郎くんの画像を見ることだ。

ハンドバッグからスマホを取り出してアルバムをタップする。

うちの子になり立ての小雪ちゃんの画像はまだ少ないけれど、太郎くんのものは千枚近く保存してある。

中でもこの前編集して、子猫時代から現在に至るまでのベストショット百枚を集めたアルバムは、今一番のお気に入り。

それを開いてニヤニヤしながら楽しんだ。

すると、太郎くんのお陰で心の疲労が見る見るうちに回復し、百枚を見終えたときには、お座敷に戻れそうな気になっていた。

太郎くん、ありがとう……。

画面には5ヶ月の子猫時代の太郎くんを、まだ表示させていた。

それを見ながらトイレから出て、一歩踏み出すと……目の前にそびえ立つ紺色の肉の壁に気づくのが遅れて、ドンとぶつかってしまった。


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