鬼常務の獲物は私!?
謝罪の言葉に対して、なんと答えていいのか分からず、私は口を開かなかった。
ただ彰さんの左腕のスーツの生地を掴みながら、体半分を陰から出して、理事長先生をジッと見つめるだけ。
彰さんもなにも答えずに、理事長先生の次の言葉を待っている。
「言い訳がましいが、君たちの関係に気づいていなかったのだよ……。
今考えれば、中々お嬢さんを連れてきてもらえなかったことから、神永くんの気持ちを推して測るべきだったのかもしれんが……」
「待って下さい。そう仰られるということは、私と福原の関係を早くにお知らせしていれば、この度のようなことは起きなかったということですか……?」
「そうだ。私としてはただ、お嬢さんが息子を気に入ってくれたらと期待していただけで、縁談と商談を混同するつもりはない。誤解を与えてしまい、すまなかった……」
のろまでお馬鹿な私の頭では、理事長先生の言葉の意味を理解するのに数秒の時間がかかってしまった。
私の気持ちが事務長に向くことを期待していただけということは……もし、私が嫌だと言えば、交際も結婚もそれ以上は求めるつもりがなかったということで……。
縁談と商談を混同するつもりがないということは……私が断っても、彰さんのビジネスチャンスは潰されることなく、社長になる夢も壊されないということで……。
つまり、息子である事務長の横暴な要求は、理事長先生の頭には初めからなかったのか。
事務長が勝手に、実行力のない駆け引きを持ちかけてきたに過ぎなかったということみたい。