鬼常務の獲物は私!?



◇◇◇

3月中旬。開花宣言はまだのようだが、会社の敷地に植えられている桜は5分咲きで、私の周囲はすっかり春めいている。

心の中にも春風が吹いて、色取り取りの花が咲き、毎日が幸せで仕方なかった。

そんな私は15時過ぎの常務室で、彰さんと楽しくティータイム中。

お茶請けは私手作りのカップケーキで、比嘉さんと高山さんの分も持ってきたのに、「あいつらに日菜子の手作りは食わせない」と言われて、全部彼に食べられてしまった。

比嘉さん用のは女の子っぽく、ハートのチョコレートでデコレーションしたのに……。

「もう」と頰を膨らませて怒ってみたけれど、頰を突かれて「その顔も可愛い」と言われただけで効果はない。

額と頰に軽いキスをくれてから、彰さんは腕時計をチラリと見て、残念そうな顔をした。


「時間だ。仕事に出掛けてくる」

「景仁会病院のお仕事ですか?」

「ああ。理事長先生はともかく、生田目事務長の顔は正直見たくないが、仕方ない。俺が出向くのも今回が最後で、後は営業部に下ろせるしな」


実は、二週間ほど前の料亭での商談後、事務長からアクションがあった。

私の社内アドレスに宛ててメールがきて、この間の失礼を詫びる言葉の後に、ふたりでの食事に誘われた。

僕に従った方が身のためですよという、脅しまで付けて……。


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