鬼常務の獲物は私!?
そっちの話だったのかとやっと気づいて、瞬時に顔が赤くなる。
するとクスリと笑う声が聞こえた。
綺麗な顔が斜めに傾き近づいてきて、私の唇に彼の唇が……触れる前に、ノックもなしにドアが外から開けられた。
中に一歩入ってきてから「失礼します」と言ったのは比嘉さんで、眼鏡の奥の知的でクールな瞳が呆れていた。
「おい、ノックぐらいしろよ」
「抜き打ちチェックの意味で、時々こうして開けて下さいと高山さんに指示されておりますので」
「高山より俺の方が、上の上司だろ」
「そうですが、信頼度は高山さんの方に重きを置いております」
「……」
厳しいことをハッキリ言われてしまったが、比嘉さんは高山さんに恋しているから仕方ないと私は思う。
冷えた視線をぶつけ合うふたりの間で、「まぁまぁ」と両者に声をかけて、「高山さんはどこにいるのですか?」と比嘉さんに聞いてみた。
「お車の用意をしています。それで私が高山さんの代わりに呼びに来ました。神永常務、お時間です。急いで下さい」
「分かっている」
出発までには後5分もないと言われ、私は邪魔にならないように慌てて常務室から出て行く。
転ばないように気をつけて階段を下り、3階へ。
営業部に戻ろうと長い廊下を歩いていたら、2メートルほど先で小会議室のドアが開き、中から出てきた高山さんとバッタリ出くわした。
あれ……車の用意をしていると比嘉さんが言っていたのに、どうして小会議室から出て来るのだろう……。