鬼常務の獲物は私!?



そのことを疑問に思いつつ、立ち止まって「高山さん」と呼びかけたが、いつもの事務的な笑顔で「急いでいますので失礼します」と言われてしまった。

きっと彰さんと一緒に出かけるのだろうから、立ち話している時間がないのは仕方ない。

早足で私の横を通り過ぎた彼の背中を見送る。

階段の方へ曲がって見えなくなってから視線を前に戻すと、今高山さんが出てきたばかりの小会議室のドアから、今度は星乃ちゃんが出てきたので驚いてしまった。


「日菜……」

「高山さんと星乃ちゃんが……あ、あれ?」


仕事内容においても、交友関係においても、ふたりに直接的な接点があるとは思えない。

それなのに、会議室で一体なにを……?

不思議に思う私の腕は星乃ちゃんに引っ張られ、そのまま小会議室に連れ込まれてしまった。

ドアを閉められ鍵までかけられ、閉じ込められたのはなぜなのか……。

いつもとは雰囲気の違う星乃ちゃんに、もしかしてマズイところを見てしまったのではないかと、背中に冷や汗が流れた。


「見たね……?」

「う、うん……ごめんね。
あの、どうしてと聞いてもいいのかな……?」


興味はあるけど、聞くのが怖い気もする。

星乃ちゃんは腕組みをしてドアに背を持たれ、ジッと私を見据えており、その無言の迫力にやっぱり聞かない方がよかったと後悔していた。

すると赤い唇が薄く開いてこう言った。


「高山さんに、口説かれていた」

「ええっ⁉︎」

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