Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
けど、運が良い事に“凛音”だとはバレていないようだ。
チラリと凛音へ目を向ければ、俺の視線に気付いたのか凛音も此方を振り向いた。
目が合った直後、『ごめん』と声を出さずに謝る凛音。
眉を寄せ、悔しそうに唇を噛み締めている所を見ると、どうやら桐谷には連絡出来なかったらしい。
……仕方ねぇ。こうなったら自力で脱出するしかねぇか。
凛音も同じ事を考えていたのか、まるで合図をするかの様に目を細めた。
「──キョウ」
「……やっ!」
「オイッ!」
シンは何かを察したのか、俺達の目配せを遮る様に茶髪男の名を呼び、顎で“来い”と促す。
それを見た茶髪男は直ぐ様行動に移し、凛音の腕を力任せに引っ張った。
そしてそのまま赤毛が座っている右側のソファーのへと連れて行く。
ソファーの後ろで立ち止まった凛音。
俺がいる所まで距離にすると約三メートル程。
両脇にいる男達を倒した後凛音の元へ行くにしても距離が有り過ぎる。
上手い事凛音が茶髪男を倒してくれれば何とかなるんだが……。
「──さぁ、東條 凛音の代わりに答えて貰おうか。何故俺達のアジトが分かった?」
シンが俺にした質問と同じ質問を凛音にもする。
だが、凛音もそこまで馬鹿じゃない。
簡単には口を割らないだろう。
「………」
案の定、口を開こうとしない凛音は口を開くどころか唇を引っ込めた。
それは立派な返答拒否であり、シンの神経を逆撫でする行為。
けれど、奴は苛立ちを表に出す程子供ではなかったらしい。
「言わないとコワーイ目に合うかもしれねぇけど?」