Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
部屋を飛び出したあたし達は一度も止まる事なく前へと進んだ。
進む度に増えていく敵。
全員を相手にしていたらキリがない。
出来るだけ一発で仕留める様にし、前へ進む事だけを考える。
早く外へ出て十夜に電話しなきゃ。
その想いだけが脳内の大半を占めていた。
“あの時”あと数分早ければ十夜に電話出来たのに……!
あたしの頭の中にはもう後悔しか残っていない。
──優音が捕まりビルの中へ消えた後、あたしは零れ落ちる涙を必死に拭いながら携帯を取り出した。
そして、奴等に見つからないよう細心の注意を払い、ビルから飛び出す。
向かったのは例の非常階段。
隣にビルに行くだけなのにかなりの時間を要した。
“東條 凛音”が出現した事によってビルの前にはDの下っ端達が続々と集まって来ていたから。
非常階段があるビルはDがいるビルから見て斜め前。
道がT字になっている為、一度は奴等の前に姿を晒さなきゃいけない。
だから、頃合いを見計らって慎重に飛び出さなければいけなかった。
あたしは上手くいったと思ってたんだ。
奴等に目撃されていないと思ってた。
けれど、あたしの姿を見ていた奴がいたのだろう。
下の奴か、それともキョウか。
どちらかは分からないけど、あたしは目撃された事に気付かないまま非常階段へと向かった。