Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
力はとんでもなく強いのに、首を絞めるその手は真夏なのにとても冷たい。
それはあたしを見据える黒い双眸と全く同じだった。
どこまでも鋭く、狂気を孕んだ黒い瞳。
揺れ動くのは秘めた信念。
「テメェ!凛音を離せ!!」
その声に瞑っていた目を片方そっと開ければ、シンの後方で下っ端に拘束されている優音の姿があった。
「……ゆ、う、」
優音は下っ端数人に囲まれていてとてもじゃないけど動ける状態ではない。
恐らく優音もあたしがシンに突き飛ばされた時に隙を狙われたのだろう。
「東條 凛音。此処まで来れた事は褒めてやる。けどな、俺はまだお前と闘う気はねぇんだよ」
「……“まだ”?」
「そ。“まだ”」
どういう意味?
そう聞きたいけれど、グッと強まった指の力に吐息さえ出せない。
シンの指が徐々に皮膚に食い込んでいくのを感じる。
このままではヤバイ。
そう思ったあたしは空いている右手をシンの左頬目掛けて振り上げた。
──が、首を固定されている状態で勢いなどつく訳がなく、簡単に止められてしまう。
ならば、と振り上げた右足。
だが、それも奴に読まれていた。
左足で軽々と止められ、その後直ぐに膝蹴りに切り替えたがそれも左手で止められた。
……ムカツク。
勝ち誇ったかの様な表情であたしを見下ろすシン。
口元に浮かべられたその笑みが癇に障り、眉根が寄る。
その余裕に満ちた表情を今すぐ叩きのめしてやりたい。
そう思ったけど、この状況ではどうする事も出来ない。
首を絞めている右手さえ外せれば……。
「──なぁ。此処まで来れたご褒美をやろうか」