Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「東條 凛音。此処に連れて来たのはお前に聞きたい事があったからだ」
聞きたい事?
「何故、“此処”が分かった?」
そう問い掛けた後スッと細くなった男の瞳。
その瞳は俺の心情を読み取ろうと鋭く光っていた。
俺も対抗するように目を細め、睨み付ける。
「チヒロの情報では鳳皇幹部と連絡を取っていないと言っていた」
「……チヒロ?」
誰の事だ?赤毛の野郎か?
シンから赤毛の男へ視線を走らせれば、
「あぁ、チヒロってのは俺の事だよ」
声を発したのは赤毛の向かいのソファーに座っていたスパイ男。
チヒロ……?
オカシイ。凛音が言ってたのは確か──
「“トモヒロ”だった筈じゃ……」
凛音はスパイ男の事を“トモヒロ”と言っていた。
「あー。ごめんな。“トモヒロ”は偽名なんだ。漢字は同じで読み方だけ違うんだよね。
俺の名前は智(サトル)に広いで“チヒロ”。これからはチヒロでヨロシク」
ニッコリと悪びれもなく笑ったスパイ男、否、チヒロは、テーブルに置いてあった灰皿から吸いかけの煙草を手に取ると、口にくわえて見せ付けるように紫煙を吐き出した。
それを見てクツクツと笑う赤毛の男。
……チッ。胸糞悪ぃ。
向けられている視線もだが、何より俺等がまんまと手のひらで踊らされていた事の方がムカつく。
あーもう!コイツ等だけなら迷わず喧嘩吹っ掛けてやんのに。
「──で、何で此処を知った?」
「………」
「だんまりか?」
ったりめぇだろ。何でわざわざ説明しなきゃなんねぇんだよ。
っていうか言う訳ねぇだろうが。
馬鹿じゃねぇの、コイツ。
絶対喋ってやんねぇ。