俺様黒王子とニセ恋!?契約
大人しい性格が災いして、恋をすることに積極的になれず、今までまともに恋をして来なかった。
ただ自分が臆病だっただけなのに、それさえ必然だったかのように思えて、私の心を後押ししてくれる。


静川さんにも、遊びの恋なんて出来そうにないと言われた私が、らしくない覚悟を決めたことも。
私が篤樹に恋することが運命ならば仕方ない。
だから、もう逃げてはダメだ。


一世一代の告白を言い逃げにしてしまった高校生の頃の私じゃない。
今の私は、篤樹への想いから逃げたりしない。


惨めでもいい。
人から笑われてバカにされてもいい。
だって好きなんだから仕方ない。


人知れず心を想いに委ねたその時、私の横でガラッと音を立てて引戸が開いた。
ハッとしてそっちを見遣ると、大きな黒バッグを肩にかけ、聳えるほど長い和弓を手にした篤樹が、中から出て来た。


壁に寄り掛かる私には気付くことなく、前を向いたまま歩いて行ってしまう。
あ、と思った時には、身体が勝手に動き出していた。


「篤樹……っ!」


気付くと、その背中を大声で呼び止めていた。


篤樹は一度、その場でピタッと足を止めた。
そして、え?と唇を横に引いて、ゆっくりと私を振り返る。
私の姿を捉えたその茶色い瞳が、大きく見開かれた。
< 100 / 182 >

この作品をシェア

pagetop