俺様黒王子とニセ恋!?契約
「澪? お前、なんで……」


その場に立ち止まったまま、怪訝そうに訊ねる篤樹を遮って、私は彼にまっすぐ想いをぶつけていた。


「私、篤樹が好きです!」


ちゃんと声が届いた証拠に、篤樹が大きく息をのむ。
まっすぐ私を射抜くその瞳が、わずかに困惑するように揺れた。


ああ。こんな瞳を、私は前にも見たことがある。
初めて告白した高校生の時も、篤樹は今と同じ目で私を見つめた。


そして私は……。
今度は、逃げたりしない。


「篤樹が私のこと受け止めてくれなくても、ずっと好き。今度は簡単に諦めたりしないからっ!」


告白と言うよりも、戦線布告のようだと思った。


「……っ……!」


逃げずに言い切った自分に満足した私の前で、篤樹はバッグに掛けた右手で口を覆った。
思わず叫びそうになって、それを理性で抑え込んだ。
そんな篤樹の様子に、さすがに私も戸惑う。


「……あの、篤樹……」


ドキドキしながらそっと声をかけると、篤樹が一歩私の方に踏み出した。


そして。


「澪、もしかして……」


篤樹が何か言い掛けた時、背後で引戸が開く音がした。
ハッと篤樹が目を上げて、私も反射的に振り返る。


「あ、四宮さん。お疲れ様。……って、篤樹……?」


先に帰ったと思っていたのだろう。
篤樹の姿を見つけて、静川さんがわずかに首を傾げた。
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