俺様黒王子とニセ恋!?契約
高校時代の真面目な部活動とは全く違う空気。
大人になって、鍛錬としての二人の練習は、あの頃よりもずっと和やかで、私が到着して一時間半ほどで終わった。


最後に姿勢を正して二人揃って一礼した後、隅のロッカーからモップを取り出して掃除し始める。
その姿を確認して、私はそっと道場の入口から離れると長い廊下を通って外に出た。


静川さんに、お礼を言わないと。
その為に道場の外の壁に背を預けて待ちながら、私の頭も心も篤樹でいっぱいだった。


初めて彼を知った十五歳の時だけじゃない。
あれから十年以上の時を経て、二十六歳になった今も、私の心はこうして呆気なく篤樹に持って行かれる。


こうなってしまうと、静川さんの言う通り、本当に因縁だと思う。
篤樹のからかい交じりの『縁が深い』という言葉も、その通りかも、と思う。


認めざるを得ない。
篤樹が弓を射る姿に心を震わせてしまった今、自分では揺らぐだけで定められなかった心のベクトルがはっきりと示されている。


同じ人に二度も、九十九パーセント叶わない恋をしてしまうなんて。
恋だと認めてしまった今、もうこれは運命なんだと諦めに近い気持ちが胸を過る。


今、彼と離れても、私はきっとまた篤樹に出逢う。
そして、彼に恋をする。
何度でも何度でも。


それが私の運命なんだ。
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