俺様黒王子とニセ恋!?契約
うん。私は疲れていなくても甘い物が好きだ。


私の返事を聞いて、静川さんは軽く肩を竦めながら笑った。


「確かにな。大会前で猛練習してヘトヘトになった後とか、連れ立ってケーキバイキングとか行ったわ。制服姿の男二人でケーキを浴びるように食べる……かなり笑いを誘う光景だったろうな」

「……と言うか、鬼気迫るものが……」


親友の静川さんの口から初めて聞く高校生の篤樹がとても新鮮だ。
あの頃にもっとたくさん知りたかったな、と思いながら、私は無意識に顔を綻ばせてしまう。


静川さんは、二口目のガトーショコラを口に運んでから、四宮さん、と私を呼んだ。
私はフォークを咥えたままのタイミングで、はい?と返事をする。


「多分その噂、結構女子の間では蔓延してたと思うんだよね。現に、ケーキやらチョコやらクッキーやら……手作りのお菓子を渡して篤樹に告白する女子が後を引かなかった」

「……でしょうね」


私もその中の一人だ、と思いながら、ほんの少し肩を竦めた。


「もしかしたら幻滅させるかもしれないけど……。篤樹は、『名前も知らない子が作った食べ物もらっても、怖くて食えねえ』って言って、大半は俺や弓道部の後輩たちにくれてたんだけどね」

「……そう、なんですか」


ほんのちょっと、グサッときた。


はっきり言われれば、それも割と普通の感覚だと思う。
むしろ捨てないだけマシかも。
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