俺様黒王子とニセ恋!?契約
それでも……私が押し付けるだけだったクッキーもきっと同じ運命を辿ったんだろうな、と思ったら、十年越しでもちょっと傷つく。
この間のクッキーも、迷惑なだけだったかな……。
シュンとしながら、私はモソモソとワッフルを口に運んだ。


けどね、と静川さんが言葉を続ける。


「篤樹が、誰にもやらずに自分のカバンに突っ込んだプレゼントがあるのも、俺は知ってる」

「え?」

「まあ、持ち帰って食ったのか捨てたのか放置したのかは、知らないけど」


そう言って言葉を切ると、静川さんはブレンドのカップを持ち上げて、息を吹いて冷ましてから一口飲んだ。
そして、上目遣いに私を見て、ニヤッと笑った。


「俺が、篤樹が告白された直後に出くわした時。あの時篤樹が手にしてたのは、手作りのクッキーだった」


ドクン……と鼓動が一つ大きな音を立てた。


そんなシチュエーションを、私は良く知っている。
ワッフルを口に運ぶ手を止めて、黙ったまま視線を返すと、静川さんはクスッと笑った。


「ついさっき、まるでデジャブみたいな光景に出会って思い出した。四宮さん、篤樹にクッキー渡して告ったことあるだろ」


直球で言い当てられて、一瞬私は口籠った。
そんな私に、静川さんは更に畳みかける。


「で、言い逃げした」

「……な、なんでそれが私だって……」


言い淀む私に、静川さんはニッコリと笑った。
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