俺様黒王子とニセ恋!?契約
「『澪つくし……』って。源氏物語の和歌を諳んじて。『再会するってことは縁が深いんだ』なあんて」
こうやって笑い交じりならば、篤樹に言われた最初の言葉を胸を痛めることなく繰り返せる。
けれど、静川さんは私の言葉を聞いて大きく目を丸くしていた。
「え……。それなんで篤樹が言ったの?」
進行方向を気にしながら訊ねて来る静川さんに、私の方が少し戸惑った。
「なんで?って……。それはわからないですけど。多分、私の名前が『澪』だから、思いついたんじゃないですか」
首を傾げながらそう答えると、『澪!?』と更に聞き返された。
「は、はい……?」
今度は私の方が訝しい思いに駆られて、語尾を上げてしまう。
キッと音を立てて、信号で車が停まった。
そのタイミングで、静川さんが目を見開いて私をマジマジと見つめて来る。
「……あの……?」
居心地悪い視線に、思わず身を縮めてしまう。
私の反応に気付いてハッとしたように、静川さんがまっすぐ前を向き直した。
「ごめん」
「いえ……」
けれど、静川さんの横顔は微妙にまだ訝しさを孕んでいる。
「あの……。どうかしましたか?」
気になって訊ねると、静川さんは少し考えるような間を置いて、結局首を横に振った。
「いや。……ごめん。なんでもない」
「でも」
「ほら。もうすぐ着くよ。懐かしいだろ」
静川さんが一際明るい声でそう返事をした時、青に変わった信号に導かれるように、車は走り出していた。
「あ……」
私も車窓の風景に見入る。
助手席側の通りの先に、懐かしい母校の校舎が見え始めていた。
こうやって笑い交じりならば、篤樹に言われた最初の言葉を胸を痛めることなく繰り返せる。
けれど、静川さんは私の言葉を聞いて大きく目を丸くしていた。
「え……。それなんで篤樹が言ったの?」
進行方向を気にしながら訊ねて来る静川さんに、私の方が少し戸惑った。
「なんで?って……。それはわからないですけど。多分、私の名前が『澪』だから、思いついたんじゃないですか」
首を傾げながらそう答えると、『澪!?』と更に聞き返された。
「は、はい……?」
今度は私の方が訝しい思いに駆られて、語尾を上げてしまう。
キッと音を立てて、信号で車が停まった。
そのタイミングで、静川さんが目を見開いて私をマジマジと見つめて来る。
「……あの……?」
居心地悪い視線に、思わず身を縮めてしまう。
私の反応に気付いてハッとしたように、静川さんがまっすぐ前を向き直した。
「ごめん」
「いえ……」
けれど、静川さんの横顔は微妙にまだ訝しさを孕んでいる。
「あの……。どうかしましたか?」
気になって訊ねると、静川さんは少し考えるような間を置いて、結局首を横に振った。
「いや。……ごめん。なんでもない」
「でも」
「ほら。もうすぐ着くよ。懐かしいだろ」
静川さんが一際明るい声でそう返事をした時、青に変わった信号に導かれるように、車は走り出していた。
「あ……」
私も車窓の風景に見入る。
助手席側の通りの先に、懐かしい母校の校舎が見え始めていた。