俺様黒王子とニセ恋!?契約
冷静に篤樹の弓構えを評する静川さんに、私は遠い的をまっすぐ見つめた。


確かにど真ん中に刺さった矢はたった今射られた物だけで、他の四本は微妙に外れている。


「四宮さん。ここでいいなら、ゆっくり見てて」


そう言って、静川さんが中に入って行く。
その気配に振り返った篤樹に見つからないように、私は慌てて引戸の影に隠れた。


中から二人の声が聞こえて来て、ようやくそっと中を窺い見る。
静川さんと言葉を交わす篤樹は、見たこともないくらいリラックスして見えた。
時折、笑い声も空気に交じる。


私はその場に立ち尽くして、ただまっすぐ篤樹の姿を見つめていた。


白い筒袖の上衣。
黒い袴を凛と着こなす色素の薄い茶色い髪の『王子様』。


あれから何年経っても、彼が創り出す空気は格別だ。
あまりにも凛として厳かで静謐で、この世の物とは思えないくらい美しい。


篤樹の射姿に意識の全部を持っていかれたまま、ただ、私は、空気を切って矢が的を射る音に身を震わせていた。
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