【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
「もしかして、この4枚目の写真のこのロングヘアーの女性、本当に津田部長……?こんな珍しい痣持ってる人なかなか居ないし、よくよく見てみれば、顔が立ちが津田部長よ」

咲希子が画像を食い入る様に見ている。今は後悔をしている場合ではなかった。どうやってこの場を乗り切るか、そればかりが頭をグルグルする。

むやみやたら揶揄(からか)う、なんてするヤツじゃない事は分かってる。ここまで来たら勘の良い咲希子に誤魔化しは多分通用しない。それだったら下手に弁解するよりも、素直に打ち明けた方が良いかもしれない。

「咲希子、あのね……」

そう思い直し顔を上げると、咲希子は自分が使っているパソコンをなぜか操作している。

「咲希子?」

「やっぱり……」

「え?」

「メール通知音をオフにしていたから気付かなかったけど、そのメール、アタシの所にも送られて来てる。と言う事はこれ、社内一括送信よ」

「…………」

それを聞いた私は言葉を失い、愕然とする。

(そんな……そんな事をしたら雪ちゃんは……!)

私はガバッ!と立ち上がり、「咲希子、ごめん」と呟いて秘書課を飛び出した。後ろで「江奈!」と呼び止める声が聞こえたけど、構わずダッシュする。廊下に出ると社員達がパニック状態。どうやら社内一括送信は本当みたいだ。

「一体、何の為に……」

なぜこんな事をしたのか。それが分からない。もしかして、雪ちゃんが私と付き合っていると宣言してしまったから、雪ちゃんも標的になってしまったんだろうか。

途中『美園さん!』と何回も呼び止められたけど、私は振り向きもせず走った。
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