【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
「……はぁ……はぁ……」

海外事業部へ辿り着くと、その混乱は更に増していた。

「津田部長!これ、本当なんですか!?」

「津田部長ってオネエだったの!?」

「ヤベ~!マジ美人!」

「え、これってマジなん?合成とかじゃなくて?」

部署内では色々な人が声を荒げていて、収拾が付かない状態になっている。

「ち、ちょっと落ち着いて……!」

その渦中に雪ちゃんはいた。

皆が雪ちゃんに一斉に詰め寄っているせいで、雪ちゃんはあたふたしている。

「美園さん!」

誰かに大声で呼ばれ、ハッとした。その場にいた全員が、その声に反応して一斉にこちらを振り向く。

『江奈……』

聞こえはしないけど、雪ちゃんの口がそう動いた。

「美園さんは知っていたんですよね!?一緒に写ってるの、美園さんでしょう!?これ、本当に津田部長なんですか!?」

海外事業部の女子社員の一人が、ノートパソコン上に上がっている4枚目の画像を、ズイッ!と私の目の前に差し出す。

「えっと……」

みんなが、私の返答を待っている。

(ど、どうしたら…!?)

写真にもう一度目をやる。

と、不意に送信元のアドレスに目が止まった。

「……っ!?ちょ、ちょっとごめん!」

「きゃっ!」

私はよく確認したくて、女子社員からパソコンを奪い取る。

「……そうか……」

そうだったんだ。さっきの違和感の正体が、分かった。

私は「ありがとう!」とパソコンを返し、海外事業部を飛び出した。

「江奈っ!」

雪ちゃんの呼び止める声がしたけど、私は止まらなかった。
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