キミが欲しい、とキスが言う
「浅黄には、ありのままを話すべきだと思う。本当の父親なら、ちゃんとそう教えるべきだ」
彼の答えに、どうして、と心の中で舌打ちした。
それで、私が彼に何を期待していたのかに自分で気づいてしまった。
止めてほしかったんだ。
今更そんな奴に構うな、俺が父親になるって、彼に言って欲しかったんだ。
でも現実は違う。私の感情論は通じない。
馬場くんの言っていることは、ひどくまっとうな答えだ。
それでも、私はその結論は受け入れたくない。
「嫌よ。私がどんな気持ちであの子を育ててきたと思ってるの。父親なんていない。今更あの人に、父親面なんてされたくない」
「でも浅黄にとっては自分のルーツだ。あいつは金髪を気にしてる。父親がどういう人物なのか知るだけでも、あいつには自分自身を受け入れるきっかけになるはずだ」
「でも」
浅黄の自己否定も、気づいていないわけじゃない。
でもそれより、私が怖いのは……
「浅黄がもし、父親といたいって言ったらどうすればいいの」
「それは……でも」
「私は嫌よ。浅黄を手放す気なんてないから」
噛みつくように言ったら、彼の手が急に私の腕を掴んで抱き寄せられた。
目線に彼の鎖骨。密着する体。腰と頭を押さえられ、自然に持ち上げられたようになり、つま先立ちになって、彼の体につかまる。
「ば、馬場くん?」
「……よかった」
大きく吐き出された息は汗のにじんだ私の肌を一瞬だけ乾かす。
「ってことは、茜さんにはヨリ戻す気ないんだな?」
「あ、当たり前でしょ?」
そんなことを心配していたの?
そう思ったら胸がドキドキして、顔が熱くなってくる。
耳を澄ますと、私のと同じくらい速い彼の心音が聞こえてきた。