キミが欲しい、とキスが言う

幸太くんの家が見えてきて息を切らせて玄関ベルを押したら、美咲ちゃんが出てきて、痛々しい顔をした。


「茜ちゃん、すごい汗……! 浅黄くん、まだ戻ってないの?」

「うん。こっちに戻っては……」

「来てないわ。ねぇ幸太」


美咲ちゃんの足元に引っ付くようにして幸太くんが出てくる。


「ごめんなさい、おばちゃん」

「いいのよ」

「浅黄、家に帰りたかったんだと思う。遊んでても全然ぼけっとしてて。夕ごはんも一緒に食べようって言ったら、やっぱり帰るって言って。俺が誘ったからおばちゃんとはぐれちゃった」

「ううん。ごめんね、幸太くん。私が浅黄にちゃんと説明してあげてないからだわ。浅黄は不安になっちゃったのね」

「あのひと、やっぱり浅黄の父ちゃんなの? おばさん、あの人と結婚するの?」


子供からしたら、『本当の父親=その人と結婚』と結びつくのかしら。
そこまで単純にはいかないんだけど、それを説明したところで意味もないか。


「あの人と結婚はしないわよ。浅黄にちゃんと説明してから教えるわね」

「茜ちゃん、私も探そうか」

「いいわよ、幸太くんについててあげて。面倒かけてごめんね」


浅黄が見つかったら連絡する、と約束してまた来た道を逆走した。


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